【CxOキャリア】林 健人氏のキャリアストーリー

CxOキャリアストーリー005
デジタルマーケティングに魅了されて夢中になって走り抜けたCxO 15年間をふりかえる
CxO キャリアサマリー
林 健人 氏
2002年早稲田大学卒、日本IBM(旧PwCコンサルティング)入社後、コンサルティングに従事。
2007年、SCSKグループで新規事業開発投資を行う。
2009年、データセクション株式会社取締役COOとしてソーシャルメディアマーケティング中心のビッグデータ分析事業を成長させ、2014年東証マザーズに上場。2018年〜2024年2月代表取締役社長。
現在は複数社の顧問やアドバイザリー業務を行う。
CxOというキャリアを選んだきっかけや背景は?
林氏:経営や事業を意識し始めたのは高校生の頃ですね。うちは祖父母の代から続く事業一家で、スーパーマーケットを経営していました。今でも都内近郊に20店舗ほど展開しています。「お客様が神様」と商人の娘である母親から徹底的に教え込まれていました。ちょうど私が高校生だった頃、日本全国にコンビニが急拡大し、その時に父親から「マーケティングって知ってるか?」と聞かれたんです。コンビニを例に取り、店舗レイアウトや商品陳列の工夫を説かれ、「マーケティング」という学問があることを知り、非常に興味を持ちました。
-- そのマーケティングの興味が大学選びにも影響したんですか?
林氏:そうです、大学では商学部でマーケティングを学ぶことに決めました。早稲田の商学部でコトラーのマーケティング論を監修していた恩蔵先生がいて、彼の授業に魅了されました。毎回一番前の席で夢中になって聞いて、積極的に質問もして。当時、ロン毛で派手な見た目をしていたせいもあって「なんだあいつは?」みたいな感じで見られていましたね(笑)。
ただ、三年生ぐらいになると「学問としてのマーケティング」に限界を感じ始めたんです。 「本当の消費者の声は井戸端会議のような口コミの中にある」と聞かされ、座学だけでは顧客の本音や深層心理をつかむことは難しいと気づいたときに急激に「マーケティング」への熱が冷めたんです。
-- そこから実際のキャリアにどう繋がったのですか?
林氏:大学卒業後、PwCコンサルティングを経て、一度コーポレートベンチャーキャピタルの事業開発ポジションを経験しました。その際に、後に関わることになる「データセクション」という会社を知り、29歳でCOOとしてデータセクションにジョインしました。データセクションは2000年の創業時から、日本最大規模でネット上の口コミを収集しデータ分析を行っていました。ブログやSNSに書いてある消費者の本音のデータを分析するんです。学生の頃、マーケティングには限界があると感じていた私にとって、それは雷に打たれたくらいの衝撃でした。このデータ分析だったら人生かけられると思いました。
CxOとしての困難や壁をどのように乗り越えたのか?
林氏:COOに就任した直後最初の3か月間、1円も売上が立たなかったんです。その時は焦りと無力感で、本気で辞めようかと考えました。役員が他に3人いたのですが、誰にも相談できず自分で抱え込んでいましたね。とある週末にもう限界を感じ「辞めよう」と決意した瞬間、ふと考えたんです。他の役員が同じように相談してきたら、自分ならどうしようか。それを考えたときに「ここまで一緒にやってきて、三ヶ月で何言ってんの?」って言うだろうと思った。最後にはちゃんと「林ではダメだ」って言ってくれる仲間だなと思ったんですよ。いい意味でね。そうなったとしても、どの道、会社にはCOOという役割が必要で、次に誰か優秀なCOOが入ってくれたなら、その人の成功へ活かすために、失敗も含めて残していくことが自分の役割だと思うようになりました。
だからこそ、自分には今何ができるのかを考え直しました。手元に名刺が5000枚くらいあったので「あ」から順番にメールを送ることにしました。 アクセンチュアだけでも100枚あって先が長いなーと思いましたけど(笑)。とにかく「できることは全部やる」と覚悟を決めました。
「さ」行に辿り着いたころ学生時代にお世話になった方の名刺が出てきて、挨拶くらいしに行こうかなとメールを送りました。返事をいただいて会いに行った時、話の中で「こんなデータ分析はできるか?」と聞かれて「できるんじゃないですかねぇ…」と答えました。それが初受注になったんですよ。
-- ドラマチックな展開ですね!
林氏:その案件を持ち帰って、エンジニアのトップに相談したら「すぐやりましょう」と。その後の1か月間、週3日は徹夜でプロジェクトを進めました。エンジニアとの関係性が築けたこととか、自分で受注できたことがきっかけで、気持ちに余裕が生まれ、その瞬間から少しずつ収益も上がり始めたんです。
CxO経験が現在のキャリアにどう活かされているか?
-- 29歳からCOOとして企業を前進させ、2018年にデータセクションのCEOにも就任されましたが、それはそれでまた違う難しさがあったかと思います。
林氏:難しさで言うと、一番感じたのは「自分本位ではなく、会社や社会本位」で行動することですかね。やりがいも大きく感じていましたが、事業を進めていく中で、法人格=代表者って見なされる部分もあるじゃないですか。だから、自分の人格よりも法人格の方を優先しマインドチェンジし続けつつも、ふとした時にすぐ自分の人格の方に戻ってしまう振り幅へのコントロールは大変でした。
-- 今は一旦そこから退いて一息ついて、家族や自分のプライベートの部分に向き合えている感じでしょうか。
林氏:そうですね。2009年から2024年まで、約15年間、データセクション以外のことは考えたことがありませんでした。やめた瞬間は100から0にいきなりなったような感覚で、その0になった状態を受け入れるのに、時間がかかってます。ただ、辞めた後にありがたいことにいろんな方から声をかけてもらいました。 その中で、自分のこれまでの視点がどれだけ狭かったか考えさせられたんです。 新しい事業の話はどれを聞いても本当に面白くて「こんな世界があるのか」と新鮮な驚きを感じました。 でも、そんな中で特に仲のいい二人の友人が共通して言ったことがあります。 それは、「健ちゃんの場合、絶対に一年くらいは重大な決断をしないほうがいい」というアドバイスでした。「いろいろ動きたくなるのはわかるけど、辞めたばかりの半年や一年は普通の精神状態じゃない、その時期に飛びついたものは失敗する可能性が高い」と。 それを聞いた時、本当に芯をついているなと思いました。
だからこそ、焦らずにじっくり時間をかけて考えていきたいですね。
-- 現在は弊社のCxOプラスのサービスを通じて様々な企業のサポートをしていただいていますが、林さんのキャリアがどのように活かされていると感じますか?
林氏:自分がCOOをしていた時には、どんな状態、どんな関係であってもCEOを支えるということを決めていたんです。これは自分の倫理観として。自分のマインドとして一度スイッチが入れば、相手を支え切ることができるんです。一方で、CEOになってみて、どんなに役員と年齢が近かったり、距離が近かったりしても、やっぱりすごく孤独なんだなということもわかりました。
CEOをやったからこそCEOに必要なCOOとはどういうものか、解ってきたと思います。トップの孤独さとマネジメント層とのギャップや課題の本質を理解出来るし、COOをやっていたからこそどのような人員構成にしたら組織にとって健全かという両者の視点からアドバイスできると考えています。
CxOプラスのクライアントからは特定の経営課題にフォーカスした相談を頂きます。それはそれで貢献するのは当然として、それ以外のところにも悩みが潜んでいるケースもあります。複合的な悩みが増殖していることもありますし、評価制度を作れない、組織運営が上手くいかないといった部分においても心配りすることが、私の重要な役目だとも思っています。
CxOキャリアを歩みたい人へのメッセージ
林氏: 悩みを一人で抱え込まず、遠慮せずにいろんな人と話しながら前に進んでほしいです。特にCxOとしてのキャリアを目指す人には、孤独な戦いにならないようにしてほしいと思います。私自身も多くの人と話し、意見を聞きながら成長してきました。特にCxOという役割は、ただ結果を出すことが求められるだけでなく、組織全体をどう回すか、どうモチベーションを上げるか、といった全体像を見ながら進むことが求められます。
CxOとしてのキャリアは、決して順風満帆ではないことも多いです。失敗や壁にぶつかることもあるでしょう。しかし、そういった時こそ周りの人の力を借りて、次のステップに進むことができると私は信じています。そして、最も大切なのは、長期的な視野を持って、焦らずにじっくりと成長していくことです。それが最終的に、より大きな成果へと繋がると感じています。

2024/12/24 12:00:00