【CxOキャリア】古瀬康介氏のキャリアストーリー

CxOキャリアストーリー008
「完全主義」と「不完全主義」の二つの人格を操りCEOに寄り添うCOOでありたい
CxO キャリアサマリー
古瀬 康介 氏
株式会社Schoo(スクー) 取締役執行役員 COO
- 2000年 日本電気株式会社に入社。
- 2007年株式会社リクルートに入社。
- 2017年株式会社リクルート住まいカンパニー 役員就任。
- 2018年4月株式会社Schoo(スクー)入社。
2018年12月取締役に就任。
CxO(COO)というキャリアを選んだきっかけや背景は?
古瀬氏: キャリアを振り返ると、新卒でNECに入社し、インターネットサービスを基盤とした事業に携わり、後半はBtoCの携帯検索エンジンの開発や携帯ポータルサイトの運営に携わりました。
NECには6年在籍し、その後リクルートへ転職しました。NEC時代に、「もっと大きいことを世の中に仕掛けたい」とずっと思っていて、そのような中でリクルートという会社が目に入りました。リクルートが実行していること自体がとてもユニークで印象的だったんです。当時、「R25式モバイル」というモバイルサイトがありました。携帯コンテンツビジネス全盛期で、ニュースや着メロ、天気、乗換案内などの携帯コンテンツは月額数百円で課金するビジネスが広がっていた中で、リクルートはそれらを全部無料にするという仕掛けをしていたんです。中吊り広告で「全部0円」と大胆に打ち出しているのを見て、そのコストの大きさが想像できただけに、「とんでもないことを仕掛けてるな」と衝撃を受けました。同時に、「世の中を変える」ということはこういう「普通のところにない」ことを仕掛けることなんだろうなと思いました。そんな突飛な企画がどのようなマインドで生まれ、どんな意思決定のプロセスを経て実行されるのか――そのど真ん中に入って知りたい!と強く思ったのが転職のきっかけです。
リクルートでの最初の部署はフリーペーパー「R25」を運営する部署でした。そこでは、フリーペーパーだけでなく、Webやモバイルサイトの運営も行っており、私は主にモバイルサイトの運営に携わりました。編集マインドを全員が持てるように、職種を問わず、すべてのメンバーがニュースのタイトル編集の業務が必須でした。モバイルサイトのニュースのタイトルを1行で収まる「15文字」に収まり、そして見たくなるようなキャッチーなタイトルになるように、一文字一文字に魂を込める。ユーザーからの問い合わせも顧客インサイトを知るために全員で必ず全て目を通す、自社の検索エンジンで検索されたキーワードは上位300は毎週変化を全員でチェックして議論するなど、とにかく1つ1つを妥協せず、徹底してました。そのように仕事では本気で意見をぶつけ合いながら取り組む一方で、会社のイベントや飲み会、プライベートではとことん楽しむ。振り返ると、それは単なる仕事の枠を超えた、まさに青春のような熱気に満ちた時間でした。その中で得た経験は、今でも鮮明に記憶に残っています。
その後、SUUMOを運営する組織に異動しましたが、その時の熱量あふれるチーム感を持った組織を作りたいという想いを持ち、組織づくりやメンバーの成長に向き合うことが多くなりました。その課程で、本気でサポートしていたメンバーが、大きく学び「変容する瞬間」に立ち会う機会も増えました。この「ターニングポイント」こそが、自分が一番心が揺れる瞬間だと思うようになり、こうした変化の機会をWebプラットフォームとして世の中に広く作っていくことができないかと考えるようになりました。
そんなときに出会ったのが、Schoo(スクー)でした。『世の中から卒業をなくす』というミッション、そのミッションの雰囲気をまとっているプロダクト、まっすぐでブレない芯を持った森さんという代表のパーソナリティに強く惹かれました。「この会社で、事業や組織を大きくしたい」そう思ったことがきっかけでスクーにジョインすることになりました。そこからが、私のCxOキャリアの始まりです。
ただ、CxOを目指していたわけではありませんし、特定の役割にこだわりもありませんでした。常に「目の前のヒトやコトに向き合い、組織全体の成果を最大化するためにできることをやる」――それを続けてきた結果、たまたま今の役割を担うことになった、というだけなのです。
Schoo(スクー)の魅力、使命
古瀬氏:スクーの魅力は、「居場所感」です。学びを通じて、共通の悩みや考えを持った人に出会えたり、自分自身を認識したり、自分がやりたいことなどが見つかる、そんな場所だと思っていて、そのような社会人のサードプレイス的な場所を提供できているところが魅力だと思います。自分たちは「世の中から卒業をなくす」というミッションを掲げていて、世の中にたくさん学びの障壁がある中で、その障壁を取り除くことによって個人・企業・社会の可能性を広げていきたいと考えています。私たち大人は、誰かと一緒に学び合う機会が減り、孤独に学び続けなければならない場面が増えていきます。学び方を体系的に教わる機会も少ないため、どう進めればいいのかわからず、迷子になったり、成長が停滞してしまったりすることも少なくありません。しかし、そんなときに共に学び合う仲間と出会えれば、新たな気づきや刺激を得て、未来への一歩を踏み出せるはずです。私たちは、そうした学びの場を生み出せる存在であり、仲間とともに学ぶ環境をつくることで、人生や可能性に彩りを加え、新しい景色を見せることができる。そこに、私たちの強みがあると考えています。
-- なるほど、純粋な知識の提供だけでなく、人と人のつながりや自己発見の場としての役割も大きいですね。
古瀬氏:そうですね。もっというと、人とのつながりと自己発見は、別々に存在するものではなく、互いに影響し合いながら成り立っているものだと思います。誰かとの関わりが、その人の人生を大きく動かすことは少なくありません。私自身、メンバーを持つ立場になり、多くの人と関わる中で、そうした「景色が変わる瞬間」に何度も立ち会ってきました。失敗して世界がモノトーンのように感じることもあれば、何かの気づきによって一気に視界が開け、鮮やかに色づく瞬間もある。そうした変化のきっかけは、常に「人との関わり」の中にありました。
人と関わりながら行動し、新たな学びを得ることで、世界の見え方が変わることがある。この経験を通じて、「人が何かから学ぶこと」は、単なるスキル習得以上に、人生そのものを豊かにする大切なものだと強く実感しています。
-- 古瀬さんも目の前の景色がモノトーンになった瞬間があったかと思います。古瀬さん自身がそれをどう乗り越えたのか教えていただけますか。
古瀬氏:最初の出来事はNEC時代だったと思います。未熟なことが多い状態でチームをまとめる立場を任せていただき、自分よりも年上の人だったり優秀な人たちを束ねる必要がありました。その中で、「自分が完璧でなければならない」「もっと全員より優秀な人でなければいけない」という「なければならないプレッシャー」をたくさん感じ、とにかくガッツで頑張る日々でした。でも、思うように結果が出せず、自己否定に陥ることも多かったんです。
そんなとき、周囲の人からのアドバイスや、本を通じた学びが支えになりました。「こう考えればいいのか」と気づくことで、「悩みの沼」から抜け出すことができるようになり、少しずつ視界が開け、自分を追い込みすぎることなく前に進めるようになりました。
この経験を通じて、後に部下を持つ立場になったとき、彼らが悩み、迷う姿が過去の自分と重なりました。そして、結局のところ、「何ができるか」ではなく、「どう物事を捉えるか」によって、見える景色が大きく変わるのだという確信が強まりました。そう気づいたとき、自分の中で「人や社会の中心は”学び”なんだ」と定義するようになったのです。
だからこそ、スクーの「世の中から卒業をなくす」というミッションに強く惹かれました。「学び」を基盤とした事業を通じて、世の中に影響を与えたい。その強い想いが、今のキャリアにつながっています。
COOとしてのやりがい
古瀬氏:COOの立場には、「完全主義」と「不完全主義」の二つの人格が求められると感じています。
なぜなら、COOは成果を牽引する立場であり、CEOが描く理想の世界を誰よりも共感し、それを実現可能な形に落とし込みながら、成果を出し続ける必要があるからです。そのためには、理想の姿にすさまじいスピードで近づけるために、あらゆる要素を満たしていく――いわば「完全主義」に近い鬼気迫る何かが必要です。
しかし、現実は常に未完成です。もし「完全」ばかり求め続ければ、常に緊張感が張り詰め、自分自身も組織も持続しません。だからこそ、時には完全主義を脱ぎ捨て、どっしりと構える「不完全主義」の視点を持つことが必要になります。
とはいえ、このバランスが難しい。おおらかでいすぎると、組織が緩み、目標達成に対する意識も薄れ、単なる“いい人”で終わってしまう。COOに求められるのは、「ここまでは絶対にやる」「このラインは必ず超える」という強い意志を持ちつつ、同時に“大きな器”で物事を捉え、できないことや未完成な部分を理解し、共感しながら受け止める姿勢です。そして、その両極を適切にコントロールしながら、組織が持続的に成長できる環境をつくること。
完全主義と不完全主義、その間で絶妙に舵を取りながら、組織を導いていくことこそが、COOの本質的な役割だと感じています。
-- 社長の森さんとの関係で、気にかけてることや、うまくやるためにやってることはありますか?
古瀬氏:「うまくやる」ということはあまり意識していません。それよりも、自分のアングルからでは辿り着けない発想や、自分がまだ思い描けていない未来の社会の洞察を森さんから聞くことで、想像を膨らませていくことを楽しんでいます。そして、その”まだない未来”をいかに実現させていくかが自分の役割でもあるので、飛び地にあるような「点」をいかに現在の「点」と繋げていき、実現へと引き寄せていくか――それをシンプルに楽しんでいるだけなのかもしれません。
普段、予測できない出来事や、自分には見えていなかった景色に触れることを面白がるようにしています。だからこそ、いつも自分よりも大きなスケールで考えている森さんの構想を聞くのは、本当に刺激的で楽しい。そして、それを実行へとつなげる際に、「どうすればうまくいくのか」「まだ線になりきっていない部分をどう形にするか」を悩み、もがき苦しみ、試行錯誤しながら一つ一つ愚直に実現させていくことこと、そこにこそ、大きな充実感を感じるんだと思います。
COOとしての課題や課題への向き合い方
-- あえてCOOとしては答えづらい質問をします。組織のなかでどうしても衝突する部分や、衝突を回避しないといけない場面で、古瀬さんとしてはどのように課題に向き合っていますか?
古瀬氏:もちろん、日々意見をぶつけ合うことは多々あります。でも、一段上、二段上の視点で見ている方向は同じで、どの選択肢が最適かを議論しながら材料を出し合っているような感覚です。だから、個人的にはあまり「衝突」とニュアンスでは捉えていないかもしれません。
もっというと、前提として組織の中での「正しさ」というものを疑っているところがあります。倫理的な問題を除けば、会社の中で唯一無二の正解があることはほとんどなく、その時の状況や環境に応じて「自分たちが選択したい解」を見つけ、スタンス取って決めていくものだと思っています。そのため、自分の考えに固執しすぎることは極力しないようにしています。
また、51対49の意思決定が必要なことが多々ありますが、それぞれの選択肢に正しさがあり、それぞれに欠点もあり、決め手に欠けます。特にスクーでは、多様なジャンルの学びを幅広く提供できるし、ターゲットも幅広く狙いにいけるポジションの強みがある一方で、新しい取り組みを始めようとすると、選択肢が広いがゆえに多くのアイデアが出てきて、決断が難しくなることも少なくありません。こうした場面では、合議の形を取りすぎると身動きが取れなくなります。一定意見を出し合い、リスクなども洗い出せた後は、とにかく決めるべき人が決定に対する責任を請け負った上で早く決めて早く動けるようにすることが、特に我々スタートアップとしては大事だと考えています。実行に移していく人たちに対して、その選択の背景や理由についての対話のプロセスはもちろん大切にしながらも、あとはそれを「正解にしていく活動」にいかにみんなの意識とエネルギーをいち早く全ベットできる状態をつくるか——私は常にこのスタンスで動いています。
-- 2024年に上場(IPO)されましたね。これはベンチャーにとって大きなイベントですし、大きな達成感を得た瞬間だと思うのですが、改めて今、上場したことに関して変わったことや、その瞬間に感じたことがあったら教えてください。
古瀬氏:僕は、あの鐘を鳴らした瞬間を含めて、正直なところ達成感をあまり感じなかったんですよね。「やったー!」という気持ちになるのかなと思っていたんですが、実際はまったくそうではありませんでした。
むしろ、上場のタイミングではすでに未来のことを考え続けていて、「どうやったら次のステージを実現できるのか?」という思考で毎日を過ごしていました。その瞬間もそうでしたし、今も変わりません。IPOを迎えたことで、さらなる多くの期待をいただいております。だからこそ、その期待値を超えていくためにどうすべきか——その責任と使命を、より強く重く感じ続けています。
とはいえ、あとから振り返ると「ああ、あのときはこういうこともあったな」と、じわじわと実感が湧いてきました。けれど、やっぱり僕の思考の中心は「過去の達成」よりも「これからどうするか」に向いているんだと思います。
COOとしてのキャリアが人生にどのようなインパクトを与えているか
古瀬氏:COOとして経営に携わる中で、強く実感しているのは「すごい時間の共有が面白い」ということです。
ビジョンは完璧で、戦略上のロジックも完成している。「あとは実行するだけ」というフェーズに入っても、想定通りに進むことの方が圧倒的に少ない。事業を動かすのは“人”で、その人それぞれは感情を持ち、強み弱みが異なり、価値観や個性も全員違う。そういう一人ひとりのピースがうまく噛み合わなければ、どれだけ理論的に正しくても、事業は成功しない。
そんな経験を前職のリクルートでも、今のスクーでもたくさんしてきました。現場は常に不完全であり、常に未完成。だからこそ、いつも気を抜けないし、足りないところを見つけたら縦横無尽に走り回って埋めにいく必要もある。そして、そこには常に一喜一憂が生まれる。でも、そんな瞬間こそが、後から振り返ると「青春」とも呼べるほど尊い時間になっていることに気づきました。
苦しかった瞬間も、迷いながらも前に進んだ時間も、すべてが振り返ったときに「あの時、面白かったな」と思えるものになっている。だからこそ、自分はこれからも、会社のみんなとそんな“すごい時間”を共有し続けたいし、家庭においても、同じような時間をつくっていきたいと思っています。
そして最近では、そんな貴重な時間を「切り取る」ことができる“写真”の偉大さを改めて実感していて、本気で写真の学校に通おうかと考えて始めているところです(笑)。
-- 個人として、今年(2025年)50歳を迎えるにあたって、考えてらっしゃるキャリアや、未来のご自身の姿など、この延長線上にあるものはありますか。
古瀬氏:ずっと前から決めていることですが、人生を賭して、この「学び」という領域で、人や社会の可能性を拓いていく活動を大きくしていくことを継続していきたいと思っています。
スクーという会社はまさに、学びを中心に、社会変革をもたらすことを目指している会社です。ある意味、終わりのない世界。その実現に向けては、常に新しい挑戦を仕掛け、変化し続けることが求められます。
だからこそ、自分自身もその実現に向けてより貢献し、牽引できる存在であり続けたい。そのために、成長し続け、”自分という器”を広げ続けることも、楽しみながら行っていきたい。
そして、この挑戦を単なる仕事ではなく、自分のライフワークとして続けていきたい。学びを通じて人や社会の可能性を拓く、それを一生かけて追求していくつもりです。
メンタルコントロールの秘訣
古瀬氏:一番意識しているのは、ため込まずに自分の考えを吐き出すこと です。毎日、考えていることや悩みをとにかく書き出し、客観的に自分の状態を認識できるようにしています。PCに打ち込むことも多いですが、手書きでノートに書くことも多く、自宅には手帳やノートが山積みですごいことになっています(笑)
この習慣が身についたのは、学生時代の経験がきっかけでした。テニスの試合で負けるたびに、1週間くらい落ち込み続けることがよくあったんです。でも、そんな時間を過ごすのが嫌で、「悩むなら太く短く」というマイルールを決めて実行するようにしました。悩むときはしっかり悩む。でも終わったらもう考えない。 そういうルールを自分の中で作ったら、いつの間にか仕事にも応用できるようになっていました。
「古瀬さんって落ち込むこととかないですよね」とよく言われることがありますが、実際はそんなことありません。よく落ち込みます(笑)。でも、自分でも人と違うかもしれないと思うのは、「悩むなら太く短く」というマイルールがあるから「落ち続ける時間」が人より短いということなんだろうなと思います。
CxOキャリアを歩みたい人へのメッセージ
古瀬氏:一貫してCxO自体が単なる役割としてしか思っておらず、肩書自体に意味はないと思っています。結局、自分ひとりでは何もできない。 どれだけ先を見据えても、実行し、形にするのはチームであり、人です。だからこそ、CxOとは「人を活かす存在」である必要があります。
この役割に求められるのは、優れた戦略やリーダーシップだけではなく、目の前の人に向き合い、人や組織の力を最大化することも必要です。それができなければ、どんなに大きなビジョンを掲げても成果は生まれません。
そして重要なのは、CxOでなくてもこのスタンスやスキルは育めるということ。「人を活かす」ことは肩書きに関係なく、今の役割から実践できる。目の前の仕事に本気で向き合い、周囲を巻き込み、成果を最大化する。そうした活動の積み重ねが、基礎となる「人間力」を鍛え、器を広げていく。そのプロセスに正対して挑戦し続けた人こそ、CxOになったときに本当に組織を動かせるのだと思います。

2025/02/07 11:20:00