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【CxOキャリア】渡邊貴史氏のキャリアストーリー

CxO MAGAZINE編集部
2025/02/15 10:24:41

CxOキャリアストーリー009

弁護士になりM&Aをやる!から始まったCxOキャリア

CxO キャリアサマリー

渡邊 貴史
キュレーションズ株式会社 取締役CSO(Strategy) 

  • 2009年 アビームコンサルティング
  • 2013年  EY Japan
  • 2015年 株式会社ユーザベース
  • 2019年 中小企業庁 スマートSME研究会 委員
  • 2019年 株式会社フィラメント 取締役COO
  • 2022年 セーフィー株式会社
  • 2024年 キュレーションズ株式会社 CSO(Strategy Officer)

これまでのキャリアについて教えてください

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渡邊氏: 元々、弁護士になりたかったんです。正確に言うと、企業法務、特にM&Aの弁護士を目指していました。しかし大学に進学できず、2浪した後に3年間フランチャイズの塾で雇われ店長な感じで、教室長をしていました。私が入ってから、1年半で教室の売上が良くなる経営状態も改善しました。そうすると、東京の本部から「業績の悪い隣の教室を買わないか?」という話がありました。今でいうM&Aです。「机が1個〇〇〇〇円、週2回の中3生は1人〇〇〇〇円」という話などを聞くなど、今で言えば、デュー・デリジェンスをしていたんだとかわかりますが、当時は意味もよく分からずエクセルを埋めていました。
自分は塾の先生をしているんですが、「自分は大学に入れてないのに、生徒たちは大学に進学する」という逆転現象が起こっていて、少しずつメンタルを病むことが増え、これは良くないと思い入れる大学に入った方がいいと思い、改めて大学受験をして入り直しました。
大学に入って、旧司法試験を目指して勉強しましたが、「頭が悪いんで、これは無理だ」と途中で思いつつも2回受けて断念しました。一方で、会社法判例は面白いなと分析をしていると、そこで初めてコンサルティングファームや外資系投資銀行の存在を知りました。ゴールドマン・サックスや、今はなくなってしまいましたが、リーマン・ブラザーズや大和SMBC証券といった会社の仕事を知り、「弁護士にならなくてもM&Aはできるんだ」と知りました。

--M&Aをやりたいという学生はあまり多くないと思いますが、きっかけは何でしたか?

渡邊氏: 昔、NHKの深夜枠で放送されていたアメリカのドラマを観たのがきっかけなんです(笑)。ドラマの弁護士がすごくかっこよかったんです。そこで「こういう働き方があるんだ」と知りました。 大きな金額が動いていて、これが世の中を動かしているんだ、成功する人はめちゃくちゃ儲けるんだなと。
父親は普通のサラリーマンで、仕事に文句を言いながら働いている姿を見て、「好きなことをやればいいのに、世の中は好きなことができないのか」と高校生の頃に考えていました。だからこそ、縛られない働き方をしたいというのが、根本にあったのだと思います。
 

--大学卒業後のキャリアからM&Aに関わる仕事に就いたのですか?

渡邊氏: 大学は4年間で卒業したのですが、その頃には28歳になっていました。最初に入社したのはアビームコンサルティングです。そもそもアビームコンサルティングに入社したのは、当時その子会社にアビームM&Aコンサルティング(現 Strategy &)があり、そこに非常に優秀な人が多かったからです。判例にも記載されていたというのもあり、ややミーハーでアビームM&Aコンサルティングのインターンに参加したところ、最終選考まで進みました。
結果として不合格でした。英語と会計の知識が足りていないという点で落ちました。ただ、親会社なら推薦できるということで、アビームコンサルティングに入社することができました。
その後、HYBRIDE(旧:大洋システムテクノロジー株式会社、現 株式会社デジタルフォルン)に転職し、さらにEY Japanに移りました。EY Japanの後、あるアドバイザリーファームの下でファンドを立ち上げ、出資を受けながらプライベートエクイティ投資事業に関わりました。ここでは投資先の設立から運営、そして事業の手仕舞いまで経験し、投資の難しさを学びました。
次は上場前の株式会社ユーザベースに誘われ、上場のプロセスを経験しました。さらに、EY時代の上司から「新チームを構成するから来て欲しい」と声をかけられ、米系の内部統制専門のコンサルティングファームであるProtiviti Japanに参画しました。Protiviti Japanでは、日本の公認会計士の社会的地位が海外と比べて低いことを実感しつつ、内部統制や戦略コンサルティングに従事しました。
2014〜2015年にはDXサービスの開発や新規事業開発支援にも取り組み、クライアントの要望に応じてスタートアップとの連携を進めました。この頃、スタートアップとの連携や大企業の新規事業開発支援などのプロジェクトもあり、後に参画することになるフィラメントの角さんと出会いました。事業のお手伝いをさせてもらうこともあり、約1年程のお手伝い期間を経てフィラメントに移籍しました。この時期、FinTechが注目されたり、第2次安倍内閣による地方創成の動きもあり、財務省、経済産業省、中小企業庁との関係も築きました。霞が関の関係者とのつながりも増え、パブリックセクターとの関係が深まっていったのもこの頃です。
こうした経験を通じて、自分のやりたいことに紐付けながら幅を広げてきたと感じています。

CxO就任、モチベーションや心境変化は?

22渡邊氏:2019年から2022年9月にかけて株式会社フィラメントでCxOとしての最初のキャリアを歩みましたが、この期間は、自分のモチベーションや心境に大きな変化がありました。まず、法的責任が直接のしかかる立場になったことで、考え方が根本的に変わりました。特に数字に対する責任や意思決定の重みを痛感しました。また、CxOとしての発言は非常に影響力を持つため、発言後、訂正が難しいケースもありました。その経験から、外部に対する発言や振る舞いには細心の注意を払うようになりました。
COOを務めた背景としては、当時のフィラメントはCEOの角さんがビジョンを描き、実行を支えるデザイナー(佐藤さん)がいらっしゃいました。しかし、オペレーションを整え、実行力を伴う業務を担う人材が不足していました。そこで、統括的な役割を担う形でCOOに就任しました。振り返ると、もっと主体的に動いてもよかったと感じています。角さんがオーナーシップを持ち、デザイナーの佐藤さんが脇を固める体制が既に整っていたため、どこまで踏み込んでよいかを測りかねていました。ただ、今思えば、もっと発言し、積極的に関わることもできたと感じています。
この4年間で、売上の確保とサービスラインの整備に注力し、特にサービス単価の見直しに取り組みました。従来の価格設定は控えめすぎるもので、合理的な範囲内で適正価格に変更することで、売上を改善しました。

--COOの重要な要素、役割やスタンスにはどんなことがありますか?

渡邊氏: COOの役割は番頭のようなもので、事業全体を見て、人の動きや組織の動き、資金の流れを正しく理解しておく必要があります。COOは、CFO、CSOの機能もすべて持っているような立場だと思っています。そのため、事業全体を把握しながら、売上をどのように作っていくかを考えられることが、COOにとって最も重要な要素だと考えています。オペレーションの構築と売上の確保は表裏一体ですし、それができるようになれば、人員配置や組織の最適化についても連動して考えられるようになります。また、頑張った人にはその分の報酬や評価を適切に還元していくことも、COOとして意識すべきポイントだと思っています。

CxOからメンバーの立場に戻る決断をした背景

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渡邊氏: 理由はいくつかあります。まず、新たな事業を仕掛けた際に、うまくいかなかった原因を改めて分析したかったこと。次に、グローバルな経験を積みたかったこと。そして、新規事業開発を上場企業の中で実践したかった。また、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)にも関わってみたかったというのも大きな理由でした。社内のCVCの動きや仕組みを実際に体験したいという思いがありましたね。これら三つの要素が、移籍の決め手になりました。

--セーフィーでの2年間の経験はいかがでしたか?

渡邊氏: CVCに関しては、投資案件の稟議を上げたり、投資委員会に向けた調整を行う大変さを実感しました。そのプロセスを実際に経験できたことは非常に貴重でした。
一方で、新規事業として公共部門の立ち上げに取り組んだのも大きな経験になりました。特に、公共事業者にカメラを購入してもらうビジネスはとても面白かったです。ただ、公共事業者は年に1回しか調達を行わないため、そのタイミングを誤ると1年が無駄になってしまう。非常にシビアな世界です。そのため、関係構築や提案のタイミングが重要でした。
また、政策にどう適応していくかも重要な課題でした。自社のサービスを政策のモデルケースとして活用してもらうために、霞が関や永田町へ直接交渉に行く機会もありました。それまでは、霞ヶ関や永田町を外から眺めるだけでしたが、実際に内部へ入り込んで「お願いします」と話をしに行く経験ができたのは新鮮でしたし、非常に興味深かったです。

再びのCxOキャリア、CSOとして新たな価値を

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渡邊氏: 2024年10月に、キュレーションズ株式会社にCSOとして入りました。これまでの経験を期待されてお声がけいただいたということもあり、会社に対しては「俺を好きに使ってくれ!」というのは思っています。一方で、自分にはまだ海外・グローバル展開の経験が足りていないと感じているので、そこは今後積んでいきたいですね。また、これまでのパブリック領域に加え、新たにアカデミアというテーマにも挑戦しています。常に「できること+α」を積み重ねていかないと、成長が止まってしまうと考えています。

--仕事で大事にしてる価値観や大事にしていることは?

渡邊氏:頼まれた仕事は断らない。もちろん、仕事の量や報酬のバランスもある中でどうしても物理的に引き受けきれないものはお断りすることもあります。ただ、基本的には頼まれた仕事は断らないようにしています。「渡邊さんは何が得意なんですか?」「なぜそんなに多くのことができるんですか?」とよく聞かれるのですが、それは仕事を選ばず、頼まれたことをやり続けてきたからだと思っています。
コンサル時代、仕事を選んでいると次の仕事がもらえなかったので、「わかりました、やらせてください」というスタンスでやっていたら、自然と多くの領域に対応できるようになりました。その結果、業種や業界に偏りのないキャリアを築けたのだと思います。このスタンスを崩さないほうが、自分の成長にとってプラスになると考えています。常に負荷がかかる環境に身を置くことで、自分の力を伸ばし続けたいですね。

CxOとしてのワークとライフの捉え方

渡邊氏_プライベート(沖縄の仕事の仲間と代々木公園にて毎年5月に開催されるOKINAWAまつりにて)

渡邊氏: 仕事は少し多めなくらいがちょうどいいと思います。例えば、年末年始でも3日くらい休めば十分ではないでしょうか。ある程度の刺激がないと飽きてしまいますし、完全に仕事を止めてしまうより、何か新しい知識を取り入れる時間に充てる方が有意義です。
結局、それは家族との時間とは別に、自分のために、そして仕事のために必要な「仕入れ」の時間かな、と思っています。もちろん、家族との時間を大切にするのは前提ですが、最低限の仕事の時間は確保すべきだと思います。アスリートと同じで、仕事から完全に離れると感覚が鈍ってしまいますから。
また、人とのつながりも非常に重要です。「あの人、最近何をやっているのか分からない」と思われると、相手も声を掛けづらくなりますし、いざ話をしても有益なアウトプットが得られるのか疑問視されることもあります。だからこそ、常に現場に立ち続けることが大事なのではないかと考えています。

CxOキャリアを歩みたい人へのメッセージ

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渡邊氏: とにかく動くしかないですよね。僕はどちらかというと厳しいタイプなので、優しい言い方はできませんが(笑)。結局、行動してなんぼだと思うんです。その中で出会った人がチャンスをくれるし、そのチャンスに応えられるだけの準備が日々できているかが重要です。
自分のケイパビリティ(能力・強み)を整理できていないと、いざチャンスが来たときに「これはできます」「これはできません」と明確に言えません。そうなると、相手も「この人は頼っていいんだっけ?」と不安になってしまう。
だからこそ、何かを求めて動き続けることが大事です。動かなければ見える景色は変わらないし、そもそもチャンスに巡り合うこともできません。CxOを目指すなら、まずは自分から動くこと。それが何よりも重要だと思います。

Cアップ_渡邊様