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【CxOキャリア】保手濱彰人氏のキャリアストーリー

CxO MAGAZINE編集部
2025/02/28 12:00:00

CxOキャリアストーリー011

東大発、初の起業部を立ち上げた起業家は漫画を愛し、出家し、3億の借金を跳ね除けた

CxO キャリアサマリー

保手濱 彰人 氏
株式会社ファンダム!代表取締役 会長

  • 2002年 東京大学理科Ⅰ類に入学
    2005年 「東大起業サークルTNK」を設立
  • 2005年 東大在学中に「HOTTEA」を起業
  • 2014年 株式会社ダブルエル(現ファンダム!)を創業
  • 2023年 PHP研究所から初の著書『武器としての漫画思考 : 落ちこぼれから東大合格。借金3億から年商30億の逆転社長』を出版

CxOのキャリアを選んだきっかけや背景は?

hotehama01保手濱氏:僕が起業したのは20歳のときで、大学3年生に上がる直前でした。本屋でたまたま「起業」に関する本を手に取った瞬間、電気が走ったような感覚があったんです。それまで「いい大学に入って、いい会社に就職するのが正解」という社会の規範に、ずっと違和感を持っていました。もともと僕は、ひどい注意欠陥を患っていて、小中高の授業で先生の話を黙って聞くのが本当に苦痛だったんです。でも、そのとき初めて「社会に合わせるんじゃなくて、自分で考えて、自分で行動する」という起業の道があると知って、「なんて自由なんだ!」と衝撃を受けました。この道だったら自分は絶対世界一になれると確信しました。
日本の環境だと、子供が人生の選択肢を自分で決めるという機会は少ないですから、何となく「大学に行くものだ」と思わされ、それに従うという流れができあがっていますよね。私も例に漏れずそのような状況で大学に入ったわけですが、昔から「どうせやるなら一番いいものを選ぶ」という合理的な考え方をしていたので、東大を選びました。そしてせっかく東大にいるのだから優秀な学生たちとネットワークを作った方が有利だと考え、そこで、2005年4月に起業サークルを立ち上げたんです。それが私のCxOキャリアへの第一歩でした。

保手濱氏_サークル

20代の挫折、30代の再起。キャリアを振り返る

hotehama04保手濱氏:当時は特にIT業界は参入しやすく、収益性が高いと考え、ソーシャルゲーム事業に取り組みました。あの頃の自分は実際の事業の選択や内容については、その時点での経験や見えている範囲に左右されてしまい、どうしても短絡的に「儲かりそうな分野」を選んでしまっていたんですよね。ゲーム業界は、優秀な人材が次々と参入してくる業界でした。コンサル出身で論理的思考に長けた人や、体育会系で睡眠時間を削って努力し続ける人などがひしめく中、僕は根っからのズボラな性格で、競争に勝ち残ることができませんでした。その結果、20代の終盤には3億円の借金を抱え、70人いた社員もすべて離れ、会社は組織崩壊。30歳のときには、何もかもゼロで、借金3億円だけが残った状態になりました。振り返ると、20代の10年間は何も成し遂げられなかったと感じています。ただ、その中で得たものもありました。それは、「自分が本当に向いていることは何か」を探求する時間だったということです。

--30代を振り返ってどうですか?

保手濱氏:30歳を迎えたとき、それまでの考え方を180度…いや、540度くらい変えました。他の人と同じことをしても勝てないことを痛感し、「自分だけの強み」「好きなこと」「やりたいこと」を徹底的に追求することにしました。そこで選んだのが、漫画やアニメの分野でした。僕は活字を読むのが苦手で、今でも本をほとんど読みません。でも、高校3年生のとき、学年最下位だった僕が東京大学に合格できたのは、漫画のおかげでした。「漫画を読めば勉強になるんじゃないか?」と思い、学習系の漫画をひたすら読み続けた結果、成績がどんどん上がったんです。僕の人生は、漫画に救われたと言っても過言ではありません。だからこそ、漫画に関しては誰よりも情熱を持って語れるし、打ち込めると確信しました。漫画やアニメのビジネスは参入障壁が高いイメージがありますが、「本当に自分が好きで熱中できることなら、多少の壁は乗り越えられる」と考えていました。その結果、多くの投資家が支援してくれ、資金調達ができました。そして、市場にすでに存在する企業を買収することで、業界内に入り込み、比較的スムーズに事業を展開することができました。

CxOとしての課題をどう乗り越えたか

hotehama03--20代の挫折を経験し、それを乗り越えて30代で成功を収められたと思います。とはいえ、3億円の負債を抱えた状態から立ち直るのは、非常に難しいことだったのではないでしょうか?振り返ってみて、どのように感じていますか?

保手濱氏:もし、私利私欲のためだけに事業をしていたら、立ち直るのは難しかっただろうと思います。「無我夢中」の「無我」とは、「我が無い」という意味ですが、私はもともと「世の中には、自分と同じように苦しんで生きている人が多い。だからこそ、そういう人たちを救えるように、世の中を良くしたい」という想いがあり、それが人生の北極星となっています。この「世の中を良くすること」が唯一の目的なので、目の前で借金を抱えていようが、何を言われようが、短期的に事業がうまくいっていようがいまいが、やることは変わりません。結局のところ、「私利私欲のためだけにやるのか」「無我夢中でやるのか」という違いが大きいのではないかと思います。もちろん、0か100かの問題ではなく、グラデーションのように段階があると思います。ただ、自分の哲学や思想がしっかり確立されているかどうかが、大きな分かれ目なのではないでしょうか。多くの人は、「事業で稼ぐこと」や「社会的地位を高めること」そのものを目的にしてしまいがちですが、私利私欲のためのみで動いていると、苦境に直面したときに耐えられないのではないかと感じます。

CxO視点での人間学

保手濱氏_著書-1保手濱氏:私は1年ほど前に『武器としての漫画思考』を出版し、最近になって本格的に発信を始めました。まだ試行錯誤の段階ですが、私の戦略は「浸透戦術」に近いです。浸透戦術とは、明確な戦略を最初から決めずに、とにかく動いてみて、突破口が見えたらそこにリソースを集中させるやり方です。今は、小中高生、親、社会人、エグゼクティブ層など、さまざまな対象に対して試しながら、どこに一番響くのかを見極めています。手応えがあるところにリソースを寄せながら、広げていきたいと考えています。

--経営者としての幸福と、企業の幸福についてどう考えていますか?

保手濱氏:人間はもともと、狩猟採集時代から共同体の中で生きてきました。助け合うことで生存率を高め、それが喜びにつながる遺伝子が形成されてきたのです。しかし、近代に入り、企業が共同体の代わりになったものの、今では資本主義に汚染され、利益追求が最優先になってしまいました。本来、企業は社員を守る共同体であるべきなのに、個人の幸福が軽視されるようになっています。例えば、社内恋愛禁止や、寿退社を許さない文化は、企業が個人の幸せよりも利益を優先している証拠です。その結果、社員は会社に愛着を持たず、退職代行を使うような関係になってしまう。こうした状況を変えるために、企業ではない新しい形の共同体を作り、思想や価値観でつながるインフラを構築したいと考えています。

これからのキャリアや生き方についての展望

hotehama05--40代に実現したいことや、キャリア・生き方についてどのように考えていますか?

保手濱氏:私は人間学を広げることで、日本全体の意識レベルを上げ、社会をより良くしていきたいと考えています。そのために、学校を作ったり、義務教育の中に取り入れたりすることを実現したいです。世の中には、素晴らしい活動をしている方がたくさんいますが、影響を及ぼせる範囲が限られていることが多いです。しかし、私は結果を出さないと気が済まない性格なので、日本全体に影響を与えられるようにしたいと考えています。40代は、それをやりきる期間になると思っています。

--人間学を広げる方法として、事業としての収益や投資を考えていますか?それとも、別の形で展開するイメージでしょうか?

保手濱氏:人間学は教育分野ですが、教育自体は大きな利益を生むものではありません。私は、事業としてのスケールを求めるというよりも、良い教えが広がることを重視しています。例えば、某人材教育の研修企業なども、大変に良い教えを伝えてはいるのですが、 事業として運営するために中途半端になってしまう部分もあります。私は、より慈善活動に近い形で、持続可能な仕組みを作る必要があると考えています。収益と再投資のバランスを見極めながら、結果として広がる形を目指したいです。私が30代でさまざまな事業を成功させることができたのは、人を理解し、人から信頼されるパートナーシップを築けたからです。人間学を学び、実践することで、結果として事業に反映され、共感してくれる人が集まり、新たなビジネスが生まれる。私は、その流れを加速させるために、起業家と思想家のハイブリッドな形を目指しています。

CxOキャリアを歩みたい人へのメッセージ

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保手濱氏氏:昔は高度経済成長期のように、「こう生きれば成功する」「こうすれば立派だ」といった、社会的な規範が明確にありました。他人から押し付けられる価値観に従えば、それが実際に成功につながった時代だったので、深く考える必要もなく、その価値観に身を預ければよかったのです。しかし、現代ではその前提が崩れてしまいました。かつては「この共同体に貢献すればよい」という明確な指針がありましたが、それが曖昧になったことで、特に経験や実績を積んだ40代以上のCxOの方々が、次のキャリアに思い悩むことが増えています。理想を言えば、自分が理念に共感できる企業や、CxOとして関わることで心から喜びを感じられるような企業を見つけるのが一番です。ただ、それだけでは不十分な場合もありますし、実際には「生活や家庭を守るため」に企業を選ぶケースも多いでしょう。そうすると、やはり葛藤が生まれやすくなります。だからこそ、私が今日お話ししたように、それぞれが自分自身の価値観を見つめ直し、それを深く理解しながら、「自分の心の軸に従って生きる」という姿勢が大切になってくるのだと思います。

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